研究について
アトピー性皮膚炎早期介入試験(PACI Study)の流れ
お子さんがPACI Studyに参加できる条件を満たし、保護者の方からご同意を頂けた場合に研究参加登録となります。登録後はアトピー性皮膚炎の治療を下記2つの「積極治療法」か「標準治療法」のいずれかをうけていただきます。どちらの治療法になるかは、コンピューターのプログラムで決定して割付することになっています。参加者の方も担当医も治療法を選ぶことはできません。参加者の方は、その割付られた治療法を生後28週まで継続します。実際に卵アレルギーがあるかどうか生後28週時に食物経口負荷試験で確認します。登録から生後28週までの間はアトピー性皮膚炎のコントロール等についても調査させて頂けたらと考えています。
生後28週時の卵アレルギーがあるかどうかを判定するまでは、お子さんは卵の加工品も含めて卵除去となります。授乳中でもお母さまは卵摂取の制限はありません。生後6か月までは母乳栄養を推奨します。
使用する医薬品の概要
本研究では、以下の外用薬を使用します。いずれのお薬もすでにアトピー性皮膚炎の治療薬として日常診療で使われているものです。
・保湿剤:ヘパリン類似物質含有製剤:ヒルドイドソフト®軟膏0.3%
・ステロイド外用薬:アルクロメタゾンプロピオン酸エステル軟膏:アルメタ®軟膏
・ベタメタゾン吉草酸エステル:リンデロンV®軟膏0.12%
・ベタメタゾン吉草酸エステルローション:リンデロン®-Vローション
・モメタゾンフランカルボン酸エステル製剤:フルメタ®軟膏(医師が必要と判断した場合のみ)
積極治療法
早期から全身にステロイド外用薬をつかって、全身の湿疹をなくす治療方法です。
全身の基本治療
・1日2回、毎日保湿剤を塗布します。・保湿剤に追加してステロイド外用薬を全身に下記のスケジュールで塗布します。
顔 | 頭皮と顔以外の体全体 | |
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登録日から登録後14日目 (登録日を0日目とします) |
アルメタ®軟膏 連日 1日2回塗布 |
リンデロンV®軟膏 連日 1日2回塗布 |
登録後15日目から生後28週まで | アルメタ®軟膏 週2日 1日2回塗布 |
リンデロンV®軟膏 週2日 1日2回塗布 |
経過中に湿疹出現した場合の追加治療
・湿疹が出現した場合は、下記に従って湿疹の重症度とは関係なく湿疹部位にはステロイド外用薬塗布による追加治療を行います。
顔 | 頭皮と顔以外の体全体 | 頭皮 |
---|---|---|
登録後15日目から生後28週まで | 登録後15日目から生後28週まで | 登録日から生後28週まで |
アルメタ®軟膏 湿疹が消失するまで連日 1日2回塗布 |
リンデロンV®軟膏 湿疹が消失するまで連日 1日2回塗布 |
リンデロン®-Vローション 湿疹が消失するまで連日 1日2回塗布 |
標準治療法
アトピー性皮膚炎診療ガイドラインに基づき湿疹がでたときにステロイド外用薬で治療する方法です。
全身の基本治療
・1日2回、毎日保湿剤を塗布します。
経過中に湿疹が出現した場合の追加治療
・下記表に従い、湿疹の重症度に合わせて湿疹部位にステロイド外用薬塗布による追加治療を行います。
部位 | 顔 | 頭皮と顔以外の体全体 | 頭皮 | |||
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湿疹の重症度 | 軽微 | 軽症~重症 | 軽微 | 軽症・中等症 | 重症 | 軽微~重症 |
登録日から生後28週まで | 追加治療なし | アルメタ®軟膏 湿疹が消失するまで連日 1日1回塗布 |
追加治療なし | アルメタ®軟膏 湿疹が消失するまで連日 1日1回塗布 |
リンデロンV®軟膏湿疹が消失するまで連日 1日1回塗布 |
リンデロン®-Vローション 湿疹が消失するまで連日 1日1回塗布 |
受診スケジュール
自宅で行うことと受診して行うことがあります。診療情報を研究のために利用します。
治療開始 | 治療中 | ||||
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受診 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
治療開始からの経過 | 登録時 | 登録後 2週 |
登録後 4週 |
登録後 8週 |
生後28週時 |
受診許容範囲 | ±6日 | ±7日 | ±7日 | ±14日 | |
自宅で行う内容 | |||||
アトピー性皮膚炎の治療 | 毎日(積極治療法 or 標準治療法) |
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アトピー性皮膚炎のアンケート | 毎週1回 |
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治療日誌(湿疹、塗布状況) | 毎日 |
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唾液採取(コルチゾール値) (成育のみ) |
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受診時行う内容 | |||||
アンケート (栄養状況, 食物アレルギー病歴など) |
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血液検査(卵・オボムコイド・牛乳・小麦・大豆・ピーナッツ・Ara h2 に対するIgEとIgG4抗体価) | |||||
食物経口負荷試験(卵) | |||||
外用薬使用量測定 | |||||
医師によるアトピー性皮膚炎の評価 |
卵アレルギーの診断について(生後28週時)
食物経口負荷試験は、お子様が現在除去している卵に対して、アレルギー反応が出現するかどうかを実際に食べてみて診断する検査です。一般診療の検査として実施します。
この検査では、あらかじめ計画した量の卵を少しずつ摂取します。全卵で10.4g相当の乾燥生全卵粉末2.6gを摂取します。40分おきに3回に分けて食べます。1回目は粉末0.1g、2回目は粉末0.5g、3回目は粉末2g摂取します。
明らかなアレルギー反応が認められた場合には、卵摂取を中止して必要な治療を行います。反応が認められない場合には、計画どおりに摂取して観察後、検査を終了します。